natの欧州観劇日記

欧州に住む素人の観劇記録。

レ・ミゼラブル(@スイス、ザンクト・ガレン)

※この記事を書き始めたのは1月だったのに、あっという間に3月になってしまいました…。結構時間が経ってしまい、色々と忘れてしまっているのですが、せっかくなので思い出せることだけでも書いておこうと思います。

 

 今年の1月初旬に、スイスのザンクト・ガレンで行われていたレミゼラブルを観劇してきました。かねてから訪れたいと思っていたザンクト・ガレンの劇場で、大好きなレミゼラブルということで、存在を知って即チケットゲット。結果としてとても楽しい旅になりました。

 ザンクト・ガレンの劇場は欧州における劇場の中でもかなり立地がいいということを今回訪問してみて初めて知りました。チューリッヒ空港に到着してから、空港駅から直行でザンクト・ガレンまで電車で一時間でいけます。町自体もとても小さく、ザンクト・ガレン駅から徒歩で10分〜15分ほどで劇場にも行けるほどです。今回行ってみて町自体も気に入った上に、劇場自体も素敵だったので今後も定期的にチェックして面白い演目があれば見にいきたいと考えています(スイスは物価が異常に高いので、お財布との相談しつつなりますが)。

 今回泊まったホテルは駅前すぐのホテル・ヴァルハラ。清潔だし、便利なのでおすすめ。朝食も(スイスにしては)豪華で結構美味しかったです。金曜日と土曜日の夜公演を観劇したので二泊しました。

泊まったお部屋。モダンで綺麗。

 さて、ドイツ語圏であまり公演されることのなかったレミゼラブル。最近では2018年にドイツ・テクレンブルクで行われていた公演を最後に、ドイツ語でレミゼラブルの公演は行われていなかったようです。

 今回のザンクト・ガレンで行われているレミゼラブルはロンドンや東京で行われている演出とは違って、ミュンヘンのゲルトナープラッツ州立劇場の芸術監督であるJosef E. Köpplinger氏による新演出で、本国版とは一味違っていてレミゼ(にわか)オタクとしてはなかなか見応えがありました!何よりも、ターンテーブルがあるので少し旧演出に近いのも嬉しい。レミゼには回る盆がないとねッ!

 ちなみに、スイスでの公演が終わってからは3月22日から6月14日まで、毎週2回ほどの頻度でミュンヘンのゲルトナープラッツ州立劇場でも同じ演出・役者でレミゼの公演が行われるようです。

ザンクト・ガレンレミゼのトレイラー↓

www.youtube.com

ミュンヘン公演リンク↓

www.gaertnerplatztheater.de

 

 さて、私が見たのは1月5日(金)と6日(土)の公演でした。会場の中はこんな感じ。どこの席から見ても舞台が近く、非常に見やすい会場だと感じました。少し変わっている形状をしているのも面白い。

「Jeder Fanatismus endet in Fatalismus(あらゆる狂信は宿命論に終わる)」

 そして幕が上がるまでこんな感じ。もうここから本国版と違うので興奮していました。

 肝心の新演出ですが、確かに本国版では絶対に見られない今風な演出がなされていて結構面白かったです。特に、Lovely Ladyの娼婦たちに混じって男娼も一人いて、男性客を取っているシーンが印象深かったです。そうだよね、19世紀のフランスのアンダーグラウンドで同性愛者がいないはずがないよね、と常識から目を覚まさせる演出がよかった。

 あと、やはり盆が回るのでいわゆる本国版の旧演出を思い起こさせるシーンもありました。その筆頭はやはりガブローシュの死のシーンでしょう。私は旧演出は10年ほど前にウェストエンドで見たきりなのですが、ガブローシュの死のシーンだけはいまだに忘れられません。ザンクト・ガレンでも、ガブローシュが死ぬシーンで盆が反転(?)し、バリケードのこちら側とあちら側のどちらも見える仕様になっていたのがよかった。ガブローシュが撃たれて死んじゃうのが目に見えるから、こっちの方がより悲劇的で私は好みです。

 そのほか、印象深かったのがHeart Full of Loveです。本国版の演出ってちょっと退屈じゃないですか?私だけですか?とにかく、どうにもマリウスとコゼットが棒立ちでただ歌ってるだけな印象が強いHeart Full of Loveなのですが、ザンクト・ガレンの新演出ではとにかく動き回りまくりでめちゃくちゃ可愛かった。今まで見た中で一番のマリコゼでした。とにかくコゼットが積極的で、マリウスがdork(アホ可愛い)な感じなので見ていて楽しかったです。コゼットはマリウスがうじうじしているので待てなくて曲の途中で勢いでキスしちゃったりしていて、本当に可愛かったです。このマリコゼを見るためだけにもう一度ミュンヘンレミゼを見たいくらい……。

 

 さて、遅くなりましたがキャストは以下の通りです。

1月5日(6日)

バルジャン:Fillippo Strocchi(Armin Kahl)

ジャベール:Daniel Gutmann(Filippo Strocchi)

ファンティーヌ:Wietske van Tongeren

テナルディエ:Alexander Franzen

マダムテナルディエ:Dagmar Hellberg

コゼット:Julia Sturzlbaum

エポニーヌ:Katia Bischoff (Barbara Obermeier)

マリウス:Thomas Hohler

アンジョルラス:Merlin Fargel

 幸運なことに、日替わりでFilippo StrocchiのJVJとジャベールを見ることができました。ドイツ語ミュージカルはそこそこ好きなつもりだったのですが、今回は全員が初見です。特に印象に残ったのがJVJ・ジャベのFillippo Strocchi、JVJのArmin Kahl、あとマリコゼの二人(Julia SturzlbaumとThomas Hohler)でしょうか。

 JVJとジャベのFilippo Strocchiはとにかく歌がうまくて、JVJの高音も気持ちよく聴けてとってもよかった。でも感動したのはArmin KahlのJVJでした。ラストで号泣しちゃった。

 そんなこんなで、ミュンヘン公演を追加したいくらいとても良かったのですが、一つだけ残念なことがあります。それは、グランテールが”いなかった”ことです!私はアンジョルラスとグランテールのオタクで、特にグランテールが一番の推しキャラで毎回定点で追いかけているのですが、この演出ではグランテールのキャラクターが他の学生たちと同化してしまっていてとても残念でした。本来、グランテールは革命に疑問を投げかけながらも、崇拝しているアンジョルラスとともに死んで行くというキャラクターなのですが、この演出のグランテールは普通に革命にやる気あるし、戦ってるしで全然面白くなかった…。衣装も他の学生たちと同じような格好をしているので、普通に途中で見失いました。「グランテールがいない」ので、アンジョルラスとグランテールの間の関係性も何もなくて、虚しくなっちゃいました。

 あと、アンジョルラスの死に方もちょっと面白かった。バリケードに前向きにぺろんって倒れて終わり。盆があるので、バリケードをぐるっと回して旧演出っぽくアンジョルラスの死体?を見せるのですが、なんか仰向けじゃないから違和感があったな…。全体的に学生たちの描写はいまいちで、私は合わないなぁと思いました。

 アンジョルラスとグランテールを除けばとても良かったので、頑張って時間を見つけてミュンヘンにも行くつもりです…!先月はロンドンでもレミゼを見てきたので、忘れないうちに近いうちにそっちの感想も書きたい……